1日目/1996年7月31日(水)「日立駅前そば屋から日立港・旅館須賀屋まで」
◆ あつい! ようやく夏なのか!◆
ソバ屋から出ると、さすがハイテク繊維、Tシャツはすっかり乾いていた。
国道6号は、ここから内陸の水戸方面へ行ってしまうため、海沿いの245号へ進むことにする。合流するには駅の向こう側へ渡らなければならない。
歩いていると、日立電線、日立化成と、日立関連のビルが続く。さすが日立市である。「この町の人々は日立の製品しか使わないのかなあ」森広君が素朴過ぎる質問を投げかけたが、誰も答えなかった。
ブレードを履き、駅前の石畳の広場を滑って行く。間もなく陸橋を越え、線路を渡ると、245号に入った。そこにも日立の社屋が有り、社員の行き来するすぐ脇を進む。
緩やかな上り坂だが、食後なのでスローペースで進む。30分ぐらい経てばランナーズハイに持ち込めるから、それを待つ。心配なのは新妻君の足だった。先ほども説明したように、ブレードで足を痛めると、走行中は決して回復することが無い。だからこれから先、新妻君の苦痛は増すばかりと見た方がいいのだ。
ブレード走行を楽しむには、どれだけ長時間足を痛めずに保てるかの一点にかかっている。だから、そのための手間を惜しんではならない。
キャプテンなど、ソルボセインや、ワセリンなど、あらゆる手段を試みていたが、今回はくるぶし痛対策のため、粒状の『衝撃吸収ゲル』を入手、10センチ四方の布袋に入れてキルティング縫いし、それをくるぶしの上に当てている。これによって、インナーにくるぶしが当たるのを防ぎ、しかも粒状なのでムレも防げると言う仕組みになっている。これが功を奏したのか、今のところ痛みは発生していない。
245号は、昼下がりと言うこともあり、何処となくうら寂しい道だった。しかも上りがキツく、ドブ板走行も強いられた。目に映るものは、工場や倉庫、人気の無い駐車場など。車通りだけが激しい騒音を響かせていた。
30分ほど滑って日立市街地から抜けると、路側帯が広くなって、やっと一息つくことが出来た。
「歩道は路面が悪い!」と、常にモンクを飛ばしている森広君の言う通り、充分な広さを持っていれば、歩道より路側帯の方が楽だった。
だんだんいい感じになって来たな・・、と思いながら先頭に立つ。
その辺りから、左は雑草の生い茂る急な土手となった。草むらの間からは久しぶりに海が覗けた。やがて滑っている道が次第に高さを増して行くのがわかった。視界が広がり、斜面の下にハッキリと海が見え始める。砂浜だが、まったく人影は無かった。
海が見えたことで、気分が伸びやかなものになった。黙々と滑っていると、陽射しも強くなり、すっかり真夏の午後らしくなって来た。路面温度は31度まで上昇、後方の森広君の額にも汗が光る。
滑っている内に喉が渇いて来た。適当な場所を見つけたいが、「自販機が有ってなおかつ広いところ」が見つからず、そのままズルズルと滑って行った。
そうしているうち、眼下の海岸線に一本の道のようなものが見えて来た。あんなところに、道路だろうか?と想い、脇道を見つけて下って行くと、やっぱり、きれいに舗装された海岸道路だった。
「しまったなあ。どこから始まってたんだ?」残念。三人が国道245号で苦労している間に、こんな良い道路が出現していたとは・・
だがこんないい道を、「あいつら」だって放っておくわけがなかった。その道を通る車は、それはそれは凄いスピードで威圧するかのように走り抜けて行く。これは危険だった。その道は路側帯を取るスペースが無いほど狭かったのだ。
やれやれ、あんたが大将!と車に道を譲り、すぐ横の防波堤の上を行くことにする。そこは歩道の役目もしているらしく、歩行者は皆そこを歩いていた。すぐ下の砂浜には、たくさんの波消しテトラポッドが置かれていて、それが途切れた100mほど前方に、海水浴場らしき人だかりが見えていた。キャプテンは、あそこまで行ったら休憩にしよう、と二人に伝えた。
海岸の駐車場付近に到着するころ、防波堤は極端に狭くなり、肩幅ぐらいの「塀」になった。三人は荷物を降ろしてその上に腰掛けた。コンクリートの上は反射熱で35℃近くになっていた。
それぞれ、飲み物を買って渇きを潤したあと、森広君は上半身裸になって陽に焼き、新妻君は例の指割れソックスを脱いで干し始めた。
地図で場所を調べていたキャプテンは、駐車場の番をしていた高校生とおぼしき少年を見つけ、歩いて行って場所を尋ねることにした。
「ここは、何と言う海岸ですか?」
出来るだけ丁寧に話したつもりだった。しかし、反応は良くなかった。その少年は決して目を会わせようとはせず、低く小さな声で「みずき・・」と一言答えただけだった。
なんだこいつ・・
引き返しながら、あの年頃の男の子はどうも無愛想で困る、と思ったのだが、すぐに、いや待てよと言う気になった。良く考えて見たら、こんな穏やかな夏の日、こんな平和な海岸に、こんな見たことも無いガンダムのような奴らが、いきなり三人も滑り込んで来て、防波堤に横たわってだらしなく腹を出したり、不気味な指割れ靴下を干し始めたり、サングラスに歯医者が使うようなバックミラーを付けていたり、あまりにも不条理な光景を、不幸にも少年はごく至近距離で目撃してしまったのである。
「考えてみりゃあ、ムリもねえ話しよ」キャプテンはならず者のような口調でつぶやくのだった。その時、一部始終を見ていた新妻君が一点を指さしながら言った。
「水木海水浴場」
・・なんだ、ちゃんと看板が出てるぢゃねえか。
◆ ギリギリの決断、宿探し!◆
三人それぞれ、想い想いの姿で海からの風を楽しんでいた。そのあまりの心地よさに、「2時半まで、30分の大休憩だ!」と言うことになった。
防波堤から見ると、砂浜はかなり長い距離に渡って広がっていた。しかし泳げるのは岬までのおよそ50mで、遊泳禁止区域の方が数倍も大きかった。その大半がテトラポッドに占領されており、たくさんの人々がその上に登って遊んでいた。その状況に、盛んに「泳禁止区域内には入らないでください」と言う監視員の放送が響き渡るが、引き返そうとする人は少なかった。
ふと、先ほどの少年を見ると、同級生らしい女の子数人が囲んで、何やらからかっているのが目に入った。少年もニコニコ笑い、ほのぼのとした光景だった。そのすぐ前を、まだ焼けていない白い肌の少女が、ビキニのまま横切る姿に目を奪われた。
「あの子ら、危ないなあ」と言う森広君の声に振り返ると、幼い子供数人が、砂浜の浅瀬でよろよろと立っていた。波が大きく、今にも頭からかぶりそうで怖い。「ほんとに危ないよ」親はどこにいるのだろうと想った。
その向こうには、遠く音のしない波。そして水平線。あそこから風が吹き抜けて来るらしい。
「出発は、2時45分にしましょう」新妻君が提案した。どうやら彼の頭は、のどかな海岸の雰囲気にすっかりとろけてしまったようである。だが、そう言うわけにも行かなかった。
「だめだ」キャプテンは即座に却下。少しずつ遅らせると最終日にしわ寄せが来てしまう。何しろ新妻君はゴブリンズ犬吠キャンプの総合幹事なのである。幹事と言うのは、メンバーより先に到着して、いろいろ段取りをつけておかなくてはいけないものなのである。
「それとも、そこに泊まるか?」キャプテンはすぐ目の前の民宿を指さした。返事は無かった。
「時間を気にする旅はヤボだ」それはキャプテンにもわかっていた。でも、途中で電車やバスに乗って遅れを取り戻すのは、それ以上にヤボなことだ。けっきょく、2時30分に準備を始めて、実際に出発したのは2時45分だった。
滑り始めてすぐに坂を上り、国道245号に復帰する。のどかな海の光景を焼き付けた目に、この車通りはいかにも殺伐としていた。
時刻はあっと言う間に3時を過ぎ、そろそろ宿のことが気にかかって来る。もしもの時のために「おさえ」をチェックしておこうと思ったが、人のいない海岸ばかりで、宿も見当たらなくなっていた。
「まあ、いいか」と思う。今までの経験では、チェックしておいても、引き返して泊まることはまずないからだ。一度進んだ道を引き返すのは、前進する以上に難しい行為だった。
あれこれ思案しながら滑り続けて行くうち、かなり高い場所を滑っていることに気づく。やがて不意に視界が開け、すぐ脇が崖になっている場所に出た。そのはるか眼下に、人だかりの有る海水浴場を見つけたのだ。『久慈浜海水浴場』だった。
見下ろすと、何軒かの海の家の屋根が見え、その周囲をたくさんの人の頭がうごめいていた。三人は立ち止まり、ガードレールに寄り掛かってそのようすを眺めた。森広君が『写ルンです』を取り出し、『鳥の目』になって写真を撮り始める。確かにこれは珍しい光景だ。
「寒そうだな」キャプテンが言った。
少し前から曇り始め、滑っていると肌寒いくらいだった。路面温度25℃。見上げると、黒い雲の塊が迫っていた。上空にはかなり冷たい空気が流れ込んでいるようだ。
「夕立が来るのかな?」キャプテンは思った。
行く先に目を移すと、遠く、海づたいに港が見えた。もしあれが『日立港』だとすると、間もなく『久慈川』を渡ることになる。予定では、その久慈川を渡った『豊岡』に4時到着。その辺りで宿をとるはずだった。だが、すでに3時半を回ろうとしていた。果たして時間内に行き着けるだろうか。
久慈浜海岸を離れ、再び滑り始める。
サングラスは必要なかった。空はどんどん暗くなり、もたもたしてられないと言う気配になった。急ぎ気味に滑っていると、港がじりじりと近づいて来るのがわかった。それにつれ次第に港の全貌が明らかになって来る。
幾何学的に作られた埋め立て地と、立ち並ぶ巨大なクレーン。そしてブルーグレイに反射する海面。
「でかい!」思わず唸った。これはかなり大きな港である。地図で調べると、やはり『日立港』に間違いなかった。こんなにでかいとなると、30分で通過するのは無理なのではないか。・・新妻君の足の具合が気になる。しかし、この埋め立て地に宿が有るとも思えなかった。
信号待ちで止まった交差点の先は、長い下り坂になっていた。青に変わってほとんどノンストップで降りて行くと、そこはもう倉庫の立ち並ぶ埠頭だった。頻繁に往来する車もほとんどが大型トラックである。
「こりゃあ、宿は無いな」雰囲気からして、ほとんどあきらめ気味だった。ところがである。さらに進んで行くと、幹線道路から別れて行く細い道が見つかったのだ。それは、古い小さな港町に続いているようだった。この想いがけない町の出現に、キャプテンは二人をストップさせた。
分岐点でもう一度地図を調べると、目的の『豊岡』まではまだ30分以上かかると言うことがわかった。出来ればこの町で何とかしたい。・・と、町の案内板を調べたところ、その真ん中あたりに、一軒だけ『須賀屋』と言う旅館があることに気づいた。
「とりあえず、ここへ行ってみるか」二人を促し、そこへ向かうことにした。しかし、こう言う寂れた町では無くなっていることも多く、過剰な期待は出来なかった。
・・と思ったのは大きな間違いで、その場所へ行って見ると、真新しい三階建ての、まるでビジネスホテルのような立派な旅館が建っていたのである。旅館の前には道を挟んで、これもちょっと場違いな『サンピア日立』と言う、巨大なスポーツセンターがそびえていた。
その周辺の並木道を眺めながら、「なるほど、この一角だけは辛うじて客商売になっているらしい」と想った。
旅館の入り口に回って、ガラスの扉越しに様子を見ると、中は薄暗くしんとしていた。どうもやってなさそうであった。
「少し先へ行ってみるか?」扉をたたく気にもなれず、三人はまた滑り始めた。だが、いかんせん景色はどんどん寂しくなって行き、草ぼうぼうの空き地ばかりが目立って来た。
・・やっぱりあの旅館か。
◆ 招かれざる客?◆
引き返して、キャプテンが旅館の扉を開けた。鍵はかかっていなかった。正面のフロントには誰もおらず、声をかけても出て来ない。
「変だなあ。やっぱりやってないのかな?」薄暗いロビーを見ながら想った。左の部屋では、テーブルにイスが逆さに乗せられていた。食堂らしい。
「休業なら鍵がかかっているはずだよなあ・・。ごめんください!」と、さらに大きな声で呼びかけると、暗い食堂の奥で、のそりと起き上がる人影が見えた。誰かが座敷席で昼寝をしていたようである。間もなくサンダルを履いて明るいところまで来ると、その人はお爺さんだとわかった。
「三人なんですが。泊めてもらえませんか?」と言うとお爺さんは、「はあ・・」と無愛想に返事をしただけだった。それ以外何も言わないので、「とりあえずはOKなのだな」と想い、外に出て、待っていた二人に荷物を降ろすよう指示した。
ブレードを脱いで再び中に入って行くと、いつの間にかお爺さんの他に女将らしき中年の女性と若い男がいて、顔をつき合わせて何か話し込んでいるところだった。
「お願いします・・」と言うと、三人はいっせいに振り向き、鋭い目つきでキャプテンの顔を覗き込むのだった。何となく異様な雰囲気である。
「・・あ、あの、三人なんですけど、いいんですか?」と言って確かめたが、女将さんが小声で「はい」と言っただけで、何だかとても無愛想なのだ。
ちょっとイヤな感じだなあ、と想いつつ、女将さんに案内され「エレベーター」で三階の部屋まで行った。・・ますますビジネスホテルみたいだ。でも部屋の床は畳みじきで、なるほどこの辺は旅館の風情を残している。
今回も二つの部屋をあてがわれ、『ホテル塚本』と同じように、キャプテン一人、新妻+森広の二人、と言う具合に別れた。
荷物を降ろしながら、森広君が言った。「招かれざる客・・」
旅館の人々の無愛想なようすに、彼もそう想ったのだろう。確かにあれはおかしい。まるでミステリードラマのわけ有り旅館みたいである。もしや昔ここで殺人事件が有ったのでは・・。そんな空想さえしてしまう。
しまった! 気おくれして料金を聞き忘れた。大丈夫だろうか・・。2、3万ぼったくられるのではないだろうな。
とりあえず荷物を降ろして、すぐ風呂にする。風呂は二階に有って、まあまあ新しくきれいだった。三人ならゆったりと入っていられる。さすが「旅館」だ。風呂の大きさは民宿ではこうは行かない。
風呂から上がって洗濯を済ませると、間もなく食事の時間となった。インターホンで呼ばれて一階の食堂へ降りて行くと、すでに10数名の客が席に付いていた。
・・なんだ、ブレード隊だけかと想ったら、けっこういたのだ。それとなく見回すと、奥の座敷には一組みの家族。ブレード隊の後ろのテーブルにもう一組の家族連れ。隣には初老の男達がいた。
初老の男達は見当がついた。たぶん釣り客だろう。しかし、親子連れは? ・・あの巨大スポーツセンターで遊んで来たのだろうか。それとも他に観光スポットが有るのだろうか。
「とにかくビール!」と言うことでビールを頼み、まずは乾杯。それからご飯をよそい、みそ汁のお椀のふたを取る。・・なかなか、期待してたよりいい香りだ。さらに、次々に運ばれて来る料理を見ていたら、これがけっこう豪華なのである。
「なんか、いけそうだよ」と三人は顔を見合わせた。
料理は、一目で上物と解る色合いをしていた。刺し身、焼き鳥、野菜、それにスープ。どことなく和洋折衷だが、量は少なめに、しかし、ひとつひとつが丁寧に作りあげられており、上品な趣を感じる。
「これは・・」一口食べただけで解った。「これは、当たりだ!」。新妻君が焼き鳥を食べかけて、すぐ大事そうに皿に戻した。「これ、とっておいて後で食べよう」
三人とも静かに、しかし想いがけない料理との遭遇に「うまい!」を連発、絶妙の味を楽しんだのであった。宿の人達は無愛想で感じ悪いが、こんなに料理が美味しければいいか、と思っていると、思いがけず女将さんが話しかけて来た。
「”あれ” で、ずうっと来たんですか? 自転車とかバイクで寄ってった人はいたけど、スケートで来た人は初めてだわ、ねえ?」
と振り返り、調理場から顔を出した板前に声をかけた。見るとさっきの若い男である。あの男、板前だったのか・・。すると、この料理はあの男が作ったと言うわけだ。ひょっとして女将さんの息子さんか?
「初めてですか? そうでしょうねえ。その、自転車なんかで来た人も、やっぱり飛び込み客なんですか?」
「そう、ぜんぶ飛び込み。いつかなんか、定年退職してやっと時間が出来たって、男の人がね、たった独りで東海村の方から自転車こいで来たんだけど、あんまりきついんで、ここで力つきたから泊めてくれって・・」
女将さんは笑顔で、料理を運ぶのも忘れるほど、ブレード隊との話しに夢中になっていた。
そうだったのだ。宿の人達は無愛想なのではなく、ブレード隊の正体が解らず、腰が引けていただけなのである。ブレード隊は自分達の格好に慣れてしまって気づかないが、初対面の人にはそれこそ、気が動転するくらいのショックを与えているのかも知れない。「異様な雰囲気」なんて失礼なことを言ってしまった。異様なのはブレード隊の方だったのである。
その後、女将さんは、この宿が建て替えて見た目は新しいが、百年の歴史を誇る由緒正しい旅館であること。それから、最近は下手な民宿は旅館よりも高くつくから気をつけるように、とのアドバイスもしてくれた。その言葉通り、旅館須賀屋の料金は、一泊二食付き一人¥6800-であった。(ビール代別)
百年と言えば、宮沢賢治が生まれた頃のことか・・、とぼんやり考えていた。
それにしても、泊まれるだけでいいか、とあきらめ気分で訪ねた旅館で、こんなに美味しい料理と、愛想の良い女将さんに会えるとは・・
「やっぱり、この旅はツイてる!」
◆ 夏の大木彫り大会はじまる!◆
食事を終えると、部屋に戻って『木彫り大会』が始まった。
これはキャプテンがブレード走行の際に、『オブジェ設置アースアート』と言うアート活動をしていることから、興味を覚えた新妻君が、「今回は、走行中に木を彫ってオブジェを作り、それを設置しましょう」と提案したのである。
森広君はと言えば、突然バルサ角材を手渡され困惑気味だったが、彼も美大出身、K2(インラインスケートの一種)のブレーキ改造も手掛けたほどの造形力の持ち主である。「ブレードの形を彫ったらどうだ?」とのキャプテンの提案に、「なるほど」とうなづき、おもむろに彫り始めた。
さて、木を削り初めて間もなく、あれほど「理想の木彫り人像」を追及していたはずの新妻君が、なんと、” ブヒッ ”「・・っおおう」と放屁をかましたのである。
なんて男だ。親しき仲にも礼儀あり、目上の前では姿勢を正せ、とのキャプテンの願いも空しく、今度は森広君までもが、" ブブブバッ "「・・っおおう」と放屁である。
こいつ・・。前回まで、キャプテンとの二人きりでの走行では、物静かな好青年を演じていた森広君だが、同年代の仲間を得て、ついに解禁状態となったようである。
『親しき仲にも放屁あり。目上の前でも姿勢を崩して出しやすく』
彼らの音色からは、そんな無言の挑戦とも受け取れるメッセージが読み取れるのであった。果たしてこの挑戦を受け、やはりキャプテンも放屁の応酬をかますのか?
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